社長は隠し金庫を持っている

自分のことが大好きだと言える人が羨ましい。私は自分のことがあまり好きとは言えないからだ。容姿もいい方じゃないし、愛嬌をふりまけるタイプでもない。物事の展開が読めるほど聡明でもないくせに、変なところが冷めていて俯瞰して見てしまうクセがある。きっと他人から見たら愛想のない高飛車で傲慢な女と思われているだろう。こんな風に卑屈にしか自分のことを思えない自分も、余計に嫌になってしまう。だから自分のことが大好きだと思える人が本当に羨ましいのだ。そう、例えばうちの会社の社長のように。

うちの会社の社長は典型的自分が大好き人間だ。会社の飲み会のときだって、誰かが話題の中心になるとすぐに機嫌を損ね、無理やり自分の話題に持って行こうとするし、結局自分が一番ちやほやされないと気が済まない。まあ、社長なんてそれくらいじゃないと務まらないのかもしれないけれど。
そんな社長、どんだけ自分大好きなんだよ、と思うのが、社長室に自画像を飾っていることだ。ハゲててデブのくせに、自画像見て嫌になったりしないんだろうかと不思議で仕方ない。私がもし社長でどんなにお金が余っていたとしても、絶対に自分の絵なんか描かせないし、ましてやそれを飾ったりなんかしない。と思っていたら、その自画像、とんでもない秘密があることを聞いてしまった。その自画像を外すと、そこには社長の隠し金庫があるのだという。同僚が自画像を外してその裏にある隠し金庫から何やら出し入れしている社長を見たというのだから間違いない。確かに社長の自画像なんて誰も盗らないし、触りたくもないだろうから、金庫を隠すにはうってつけの場所であるには違いないのだけど。
会社の金庫はちゃんとあるので、一体そこに何を隠しているんだろうと気になるは気になる。悪いものを隠していなければいいけれど…。案外、自分の写真を仕舞っていたりして。ほんとにあり得そうで怖い。